永遠の問い
結婚式は、やさしかったよ。ニコと、あらいぐまちゃんの、えがおがひかり、かがやいていた。わたしは、色とりどりの花が咲き乱れるお花畑に埋もれたら、あんな感じなのかなと思いながら、みていた。ニコと、あらいぐまちゃんは、あの瞬間、世界でいちばんきれいで、幸福で、すてきだった。純白のタキシードを着た、ふたり。まだ、夏の青が色濃い空の下で、永遠を誓いあう後ろ姿に、金糸雀もひっそりと感動していたし、わたしは、静かに泣いていた。
おなじ空の下でも、かなしんでいるひとが、くるしんでいるひとが、どこかにかならずいて、同時に、たのしんでいるひとも、わらっているひともいて、どうして平等に、しあわせをかみしめることができないのだろうと、ときどき、どうしようもない理不尽さに、漠然とした怒りをおぼえることもある。憤り、嘆いて、けれど、わたしになにができるだろうと想うと、まるで、解答の存在しない問いと向き合っているような、そんな絶望にも似た空虚だけがのこるのだ。
ニコが、あらいぐまちゃんの身長にあわせて、かがんで、誓いのキスをして、わたしと金糸雀と、アンドロイドの神父さまは、せいいっぱいの拍手をして、刹那、どうか、世界のどこかのしらないひとたちも、わたしたちも、ふたりも、みんないっしょにしあわせになれるよねって、神さまに、確約を乞うみたいに、祈ってた。
永遠の問い