しろくまちゃんたち

 きれいにゆがんだ、曲線。
 ばかみたいにあついからと、しろくまちゃんが、こどもみたいにぼやく。せんぷうきのまえで、あーあーと言って、きみがときどき、笑う。気が狂ったみたいと思いながら、わたしは、しろくまちゃんのせなかに、氷嚢をおしあてる。気温三十度なんて、いまはもう、あたりまえのまいにちで、でも、もうすぐ、九月になるのにね。季節は、どんどんとおかしくなっているのだから、世界も、それに比例して、いびつになっているのだろうか。真夜中。星は、ちいさな悲鳴をあげるし、海は、ときおり、おかあさんから、鬼になる。アイスコーヒーの氷が溶けるのが異常に早くて、薄くなったコーヒーをわたしはうんざりしながら飲み干す。しろくまちゃんが、こんなの気休めにもならんと呟いて、フローリングの床にごろんと寝転がる。けむくじゃらなのがわるい、と、わたしは思いながら、でも、しろくまちゃんは、しろくまなのだから致し方なし、とも思う。きみが、せんぷうきをひとりじめしているけれど、冷房はずっとついていて、二十三度という環境にやさしくない設定温度で、それでも、八畳の部屋に、わたしと、きみと、しろくまちゃんという人口密度も、しろくまちゃんが巨体故か、まるで涼しくならなくて、このクーラー、壊れてやしないかと不安になるほどだ。でも、わたしだけのときは、二十八度でもすこし肌寒いくらいなので、やっぱり、ふたりぶん(主にしろくまちゃん)の質量、体温、二酸化炭素もろもろの影響だろう。しろくまちゃんと、毎夜、おなじベッドで眠るという、きみのことを、わたしはちょっと、尊敬しているよ。

しろくまちゃんたち

しろくまちゃんたち

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-26

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