ダマスカスの瞳 Deep eyes of Damascus

ダマスカスの瞳 Deep eyes of Damascus

         序章
3日前になるが、僕のSNSメッセンジャーに突然飛び込んできた友達申請のメール、名前はHayaとあった。
シリアアラブ共和国の首都ダマスカス在住の女性からだった
プロフィールに写っていた其の写真、やや小麦色の
細長いアーモンド型の顔の輪郭、細く長い眉毛、アンニュイな気配の目、黒い瞳の奥に小さく何かが映っている。少し口角の上がった薄いピンクの紅を差した唇。小首を傾げて微笑むその顔、肩までかかるライトブラウンの緩やかな巻き毛。その写真を見て僕の頭に浮かんだのは古代ギリシアの彫像にある、あの何処かに憂いを帯びた深く引き込まれる様なアルカイックスマイルだった。
首元と袖口に白い刺繍の施された純白のスモックブラウス、白地に紫の草と赤い小花が日本の浴衣柄の様に散りばめられたプリントのガウチョ風ロングスカート、小麦色の細い両の手首には幾重にも輪が重なる銀の細い腕輪が鈍く輝いている。
マンションのベランダの様な場所にしゃがんでレンズを見つめる其の姿には見事に計算された様に自らを表現していて、且つそこはかとなく漂う気品があった。きっと月の砂漠に出て来るラクダの背に揺られるお姫様もこんな人なのだろうな、とその写真を暫く見つめて僕は独り想いを巡らした。
そしてその日から僕とHayaとのメール交換が始まった、二人の間の距離は8800km 時差6時間
果たしてこれから何が始まり、そこには何があるのだろうか、
今は、全く分からないのだが

ダマスカスの瞳 Deep eyes of Damascus

ダマスカスの瞳 Deep eyes of Damascus

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-24

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