赤い輪郭
ララ、心臓が、音楽を奏でてる。
信じられないかもしれないけれど、わたし、きみのことが好きだった。
そういう告白を、流れるようにしたかったのにと、嗚咽混じりに話す、鶫のまわりに生まれる、赤い花。きっと、鶫の肉体がなくなったら、ここには、鶫のかたちをした空白だけが残るのだと想うと、すこしだけ泣けた。花は、おもしろいくらいに、ぽんぽん生えてきて、ここはいずれ、なまえのわからない赤い花に埋めつくされて、ぼくと鶫だけが、異物として存在して、ゆくゆくはふたりとも、たましいだけを解き放って、器は消失するのだ。ララが、無意識のうちに奏でている音楽を、譜面化して、いつか、なにかしらの楽器で演奏してみたかったと思う。楽器など、せいぜいリコーダーと、鍵盤ハーモニカくらいしか、扱い方を知らないのだが。だれかが早く、終焉の鐘を打ち鳴らして、ぼくらに幕をおろしてほしいと、仰向けになり、涙と唾液でぐちゃぐちゃの顔を両腕で覆い隠す鶫を見下ろしながら、祈る。
気づけばいつも、なにかを祈ってる。
無力なぼくらには、それくらいしかできないのだ。
赤い輪郭