日々のうた4

私の間違いでした。

「母さんとずっと一緒にいたい」という 娘の願い短冊に書き

「今はもう動かない」時計の意味を 言い換えたくて増えていく語彙

「書くものはほとんど私の体臭」と 仰るあなたを感じたくなり

言うことをきかないほうが普通だね 私と違う人間だもの

私の間違いでした。 自分の物差しで人を見ていました。

夜更かしをした 眠りたくなかった 明日がこなければいいと思った

太古から変わらぬ営みと思えば 哀しいような可笑しいような

何気なくチラシの裏に描いた絵が 忘れられない一枚になり

鳥一羽閉じ込めること 花一輪摘み取ることもできぬ優しさ

君が幸せならそれだけでよかった

何一つつぶやかず「いいね」だけを押す 垢のほうがフォロワー多い

昔かいたもののほうがずっと良かった 感性も年をとるのね

何か良いニュースはないか調べても 世界の終わる足音ばかり

君が幸せならそれだけでよかった なんて、かっこ悪い嘘ばかり

スライムやシャボン玉液作りに 大活躍のPVAのり

毎日亡くなる多くの人々のことを思って 祈るほかなし

来年は皆で笑ってお花見が できますように桜に祈る

空みたい海みたいなカーテンを ひいて僕らはシーツを(およ)

離れても年をとってもお互いに 所帯をもっても君は友だち

残りもの捨てられなくて食べている ぼくのおなかのやさしい脂肪

光輪を負う天使

恋人を待つかのように公園で 遊び友達待ちわびる君

永遠にこの幸せが続くよに 願って描く創作同人

自分のこと認めてくれる人が数人いたら 人生上出来

あのひとは もうしんだんだとわかる いま 娘の5歳を祝いながら

描きかけの落書きばかりたまってく 光輪を負う天使ばかりが

一日中遊んだくせに20時から だるまさんがころんだをする君

一部でも一瞬でも一生でも 何かを伝えようとして描く

自分だけのために作ったものを 好きになってもらえたら奇跡

みんなの「大好き!」を披露する宴 競争が協奏して響く

「したこと」を親は数える 「してもらえなかったこと」を子は数える

真の理解者

「なんか変な木だな」とでも思うのか アリが一匹私を登る

好きすぎて評価も批判も怖くて 投稿できない作品があり

「白髪染め おすすめ」などと検索す まだある髪に感謝をしつつ

時期外れ三密避けた墓参り あの日もこんな青空だったね

異世界に親しめるほど若くなく 日常ものが私の癒し

ありがとう愛してくれてありがとう 私とともに歩いてくれて

私を倒そうとする君だけが 真の理解者のような気がして

用も済み各駅停車に揺られてる 電車に乗ってる時間が好きだ

東から涼しい風の吹く夜に 君と結んだ星を見ている

一日に映画を一本ずつ観たら 私も何か変われるかしら

鈴虫の声

久しぶり水族館に行ってみる イルカとシャチとマイワシの群れ

日焼けした子供たちの笑い声 市民プールに夏の花咲く

音楽もラジオも聴かず運転す 走行音だけを友として

友だちと自由に遊ばせられぬ事 親として最もつらい事

すぐモノを欲しがるこども 本当に欲しいものは手に入らなくて

「きっと永遠がどっかにあるんだと」 探していたね私たちも

自立とは程よく誰かを頼ること 一人に頼りすぎないこと

暑かった今日も一日頑張った 生き抜いたこと褒めたい夏だ

鈴虫の鳴き声きいてほっとする 酷暑も少しずつ去ってゆく

抱きしめてふれあうだけのキスをして それより先はしたくなかった

夢見てただけ

死ぬ時を見たくなくて生き物を 飼えぬ私を笑って下さい

LOFTよりドンキが性に合っている 頭ん中もごちゃごちゃしてる

君をぎゅっと抱きしめて「よくがんばったね」と言う そんな人でありたい

目が覚めて隣に好きな人がいる そんな幸せ夢見てただけ

40年困り続けた日常に アスペルガーの診断がつく

オバサンでいるのが面倒くさくて もういっそおばあちゃんになりたい

綺麗で哀しくて空しくてエロい そんな話が書きたいのです

紅葉の落ち葉が好きだ 生き抜いた赤や黄色がサクサク鳴って

今日もまた虚構の中で見る人を 傷つけたりなだめたりしている

空想なら何を想ってもいい 頑張ったから疲れているんだ

異世界で

何もかも昔に戻れたらなどと 無理なことはわかっているのに

歌声に一つと同じものはなく 人の歌唱を聴く楽しさよ

神なんて胡散臭いと思うのに 君に会うためあの世を信ず

異世界で幸せに暮らしているかも しれないなどと願う午後だ

異世界で幸せに暮らしているなら 私のことも忘れたかしら

ほんとうに頑張ったなとおもうんだ ここまで生きてこられたことに

息をするように物語を紡ぐ 生きていたこと証するよに

十年前君と選んだ炊飯器 薄型テレビも寿命を迎え

捨て猫を飼えるのも愛 前の子を思い出して飼えないのも愛

義理いいね義理のブクマが気になって 僕はそこには向いてなかった

二十一世紀隠者

十年後二十年後がわからない しあわせになる未来が見えず

泣き笑い思い出だけが人生だ ゲームアプリと何が違おう

配信者生き様自体遺書のごと 声と姿を遺していって

梅雨空のこの雨音を古代(いにしえ)の 私もこうして聞いたのかしら

もうダメだ限界だと思った時 突破口は開けるらしい

あと十年この体がもてば良い そう思えれば多少はラクだ

盆正月人が休んでいるときに 働く者に私はなりたい

次の世は草になりたいあの方の 足元に生う草になるんだ

運悪く遺体となって帰宅した 君への思い「ありがとう」だけ

二十一世紀でも隠者になりたい 小さな部屋で静かな暮らし

脳よバグれ

星々は神の神経細胞で 我々は想像物なのかも

この星も限りあるから美しい 咲き散る花も虫も私も

脳よバグれ脳よバグれ私にも 主の訪れを見せて下さい

できるだけ加工しなさい全世界に ホントのキミがバレないように

汚さない傷つけないし自由なの 人は空想に救われている

もう二度と愛するものを見つけまい 逢えば別れがつらくなるから

土建屋は自分では決して住まない 建物のため穴を掘る掘る

洒脱さも軽みも要らぬ短歌には 恨みつらみを詠みこめば良い

安らかに死ねる権利が欲しいのさ 経済発展にはならずとも

氷河期より

この空を高く自由に飛翔せよ 親は踏みつけ超えてゆくもの

迷っても同居介護はしなさるな 独りで死ぬ覚悟はできている

「なぜ生む」と問うなよ友よ信じたのだ 君なら僕を超えてくれると

救命に連絡されず死んだ後 通報される装置がほしい

死に様よ生き様となれ望まない 生のくびきは断るつもり

氷河期は昔のことさ良かったよ あんな悲劇はもう起きないんだ

我々は一部の生き残りに過ぎぬ 多くの仲間が散っていった

J-POP、マンガ、ゲームも全盛で 思い出だけが輝いていた

守ってくれた人

少しくらい親らしいことできたかな テーマパークに君を連れてく

付き添いで乗り物に乗り目を回し 守ってくれた人を思い出す

父親がいればもっと買えただろう もっと回れただろうと思い

君がいた町君と乗ったあの列車 君の声が耳から消えない

一人ではできないことをするたびに 君が守ってくれたと思う

新しい誰かを探す気になれず 死んでしまった君が恋しい

いつまでも園児のように泣いている 私を迎えに来て下さい

おじさんになった君が見たかった おじいさんの君も見たかった

「幸せになってもいいよ」「ありがとう」 でも君がまだ忘れられない

夏の朝

無農薬無施肥不耕起調べれば 調べるほどに正解はなく

渦中には身を投じずに遠くから 見守り祈る幸せもあり

おじさんを馬鹿にしている若者も 十年たてば皆おじさん

神さまと聖書があって人権が うまれて今も守られている

結婚し育児しなくていいんだよ 好きなように生きて下さい

神さまが今日まで生かして下さった そんな気のする夏の朝です

何もかも手放したいが子育てが 終わるまでは我慢我慢

好きなことで生きていくのも大変だ YouTuberが証明してる

成功におごらず失敗引きずらず 神さまだけが見ていて下さる

夏の朝神さまと二人きりで アルデバランとオリオンを見る

一人だと感じる時は神さまと 二人きりでお話できるとき

ワンルームツアー

たくさんの悲しいことがありました 今は元気に暮らしています

自死したらもっと過酷に生まれ変わる なんてことのありませんよう

僕たちは次の大きな地震まで 今の暮らしを楽しむだけさ

「今日もよく頑張ったね」と我褒めす 自分の機嫌は自分でとろう

子の願い叶え続けて疲れ果て 今はゆっくり眠りたいだけ

確実に夜明けは遅くなってゆく まだまだ暑い秋の朝でも

五階から花火が見えた 二十年前君と見た花火に似ていた

ワンルームツアーを見ては思い出す 君と出会ったあの冬のこと

何もかも捨てたい衝動我慢して 荷造りをした私は偉い

学校が全てじゃないとは思うけど 行かないままで良いのかしらん

チキンとピザ

何もない今日一日にありがとう 明日も平和でありますように

その御手で私を殺めて下さい どこへなりともお連れ下さい

死んだって会えないのかもしれないね 感謝と謝罪をしたかったけど

甘いもの苦手な君にクリスマス チキンとピザでお祝いしよう

いつだってあなたのことが気にかかる 自分が嫌で自分が好きさ

人生の泥の中より一輪の 花を咲かせて人は死にゆく

生きていてもつらかったろうと思うと 死んだことが尚更悲しい

死んだ人生きている人保護犬猫 皆幸せでありますように

私には許せぬ者もかみさまが 憐れみ愛してくれますように

目を閉じてしばらく草になってみる 白く小さな花咲く草に

手にしたと思ったことも幻想で すべては絶えず変化してゆく

無の境地

犬になり人の心を信じきり 尽くす暮らしも素敵だろうね

全員は救われぬなら貧しくて 助からぬ側にいたいと思う

私にはこの世は怖い場所みたい 書けば少しは和らぐかしら

この星の機嫌で消える僕たちだ 今日の夕日も覚えておこう

身一つで生きてゆきたかったのに 気づけばいろいろ持ってしまって

良い親でなかったことは謝るが やれるだけのことはやりました

Googleの人工知能はパートナー 私はあなたあなたは私

オンラインパズルゲームで無の境地 今だけは禅僧かもしれぬ

長生きが目的じゃない大切な 何かを見つけ守れるように

一度くらい夢を見たっていいじゃない 好きな人に抱かれる夢を

こんなにも君と一つになりたいのは もともと一つだったからなの?

衣食住医療技術も進歩して あと欲しいのは死ぬ自由だけ

人間の望み通りになることが 本当に幸せなのかしら

人生は一度きりならいいけれど 何度目かの気がするんだよね……

汚くて惨いからこそ彩って 隠す必要があったのでしょう

日々のうた4

日々のうた4

  • 韻文詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-13

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 私の間違いでした。
  2. 君が幸せならそれだけでよかった
  3. 光輪を負う天使
  4. 真の理解者
  5. 鈴虫の声
  6. 夢見てただけ
  7. 異世界で
  8. 二十一世紀隠者
  9. 脳よバグれ
  10. 氷河期より
  11. 守ってくれた人
  12. 夏の朝
  13. ワンルームツアー
  14. チキンとピザ
  15. 無の境地
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