幾星霜
ほしがしんでた。こういうのを、かなしい、という気持ちだけで片づけてしまうのは、わたしの道理に反するなぁ(実際のところ、そんな大層なものではないけれども)と思いながら夜空の、不確かな星座をさがしている。腐っていくばかりなので、次第に、あしもとがぬかるんでくる。
星から、星をみている。
人類はみんな、やさしかったのだとおしえてくれたのは、コールドスリープから目覚めた過去のひとだった。にんげんはもう、いないと思っていましたと、そのひとは言って、わたしは、ほぼいないも同然です、と答えた。夏、という季節が殺人的に暑かったのはもう、幾千年前のことで、それどころか、四季、なんてものはいつのまにか、溶けて混ざりあって、なにもなくなった。感覚は乏しく、神経は鈍り、肉体は脆弱し、生命は泡沫と例えらえて、わたしとネムは、それでも、唯一の生き残りという、途方もなく壮大で、絶望にも似た使命感に脅されて、骨になることを免れてきたのだと、過去のひとに話した。
過去のひとは泣いてた。
あたりまえだと思った。
幾星霜