遠雷

三十三度へ曝け出した皮膚が
夕映えを呑み込んでいく、
遠くに落ちたいなびかりに
視線がずっと縫い止められている

くぐもった昨日の雨音を聞いた
隠された暗号を探すような心持ちだ
透明な瘡蓋を抉るような心持ちだ
身体の音と混ざるまで、耳をひらく

ペトリコールの上を歩きながら
前腕に残った赤色を舐め取った
甘さを塩辛さで誤魔化すのは
アベリアを手折るより簡単じゃないか

五感をどこかに、どこへ、置き忘れられたら
遠雷が連れ去ってくれたのは、ひとつだけだ
替えのきかないかけらの、ひとつだけだった

遠雷

遠雷

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-23

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