六月の晩餐

 ないているのは、こども?それとも、すべてのいきもの?命をもった、血のかよった、かよわい肉をまとった、呼吸をする、生命。深夜の高速道路からみた、しらない街のあかり。孤独は、いつも、すぐそばにあって、たとえば、恋人や、友だちよりも、近いところにいる。見守っていて、ときどき、介入してくる。きみが、きまぐれにつくったのが、ローストビーフであることの、その、きまぐれ、の意味。いっしょに、肉をたべるという行為は、すこしだけ、性行為に似ていると思った。すてきなお皿も、華奢なワイングラスも、洒落たキャンドルも、真っ白なテーブルクロスも、ぼくにはちょっと、ふつりあいで、こわいよ。一瞬で壊れて、汚れてしまいそうな、うつくしいものたち。いつか、目が醒めるほどの極彩色の花に埋もれて、窒息したい。植物園にて。

六月の晩餐

六月の晩餐

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-12

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