光と影
東京に、ゆめをみていた、きみの、いまはただ、やさしさにくるまれて眠る、こどもみたいな寝顔を、たいせつにしていたい。閃光。つねに、光があるところには、あたりまえのように、影がつきまとうのだ。ビルにかこまれた、都会の釣り堀に、密やかに生きていたのは、白いワニだったと、きみは記憶していて、ぼくは、十七才の夏にみた、しらないひとたちのセックスを、いまでも、じぶんのなかで燃焼しきれない、雑然としたものとして、見て見ぬふりをしている。浴槽にて。もうひとりのぼくとの対話には、いつも、熱がない。マイナス温度の、声色は、途方もなく透きとおった、青。ドーナッツの、くりぬいた穴の部分が好きな、となりの家のこども。おかあさんはいないけれど、おとうさんはいて、ぼくには、きみがいるけれど、きみ以外はだれもいなかった。
光と影