未来

 白い光のなかでみたもの。なにか、なまえがあるような、ないような、あいまいなもの。ぼやけた輪郭と、不確かな影。においのない、それは、うまれたときから無機物か、それとも。
 電車のヘッドライトだったのかもしれない。
 踏切で、夜、光につつまれたとき、一瞬、呼吸をわすれた。肺が、冬の、つめたい空気に晒されたみたいに、こころもとない。となりには、ノアがいて、わたしと、ノアだけしか、ここは、存在しない国で、電車をはしらせているのがだれかを、かんがえたことはなかった。
 森で。
 おきにいりのワンピースを着て、眠る。祈る。想い、慈しむ。どうぶつたちの声をきいて、素朴なサンドイッチをたべて、本を読んで、ときどき、歌を口遊む。それで、ゆくゆくはわたしも、森に還ればいい。

未来

未来

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-06-03

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