営み

 きたないものに対する嫌悪が、時折、きれいなものに発動することもあって、夜とは、私たちの世界なのだと、わがものがおで呼吸する、夜のバケモノが、きまぐれにみせてくれる夢が、そういう感じである。眠らないように、コーヒーを何杯も飲んでいるあいだにも、脳の、もう、まるっきり、にんげんの指先すらも介入できないところから、バケモノたちに支配されてゆく。花の首輪で絞められた、きみが、安っぽいコピー用紙を想わせる、青白い顔で、微笑んでいて。野原。いつも、ひとりで遊んでいる、こぐまと、手を繋ぎ、なにかの儀式みたいに空を見上げていた。
 星はきれいね。
 月も。
 あの星ひとつひとつに、でも、生きているものがいるとは限らない。
 月も。
 ならば、生きているものがわんさといるこの星は、すてきだね。
 生きているものがいっぱいいるからって、すてきだとは限らない。
 しあわせがたくさんある。
 そのぶん、ふこうもある。
 愛も。
 裏切りも。
 やさしさも。
 憎悪も。
 生も。
 死も。
 性も。
 詩も。

 吐息のように、ことばはこぼれて、きえる。

営み

営み

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-29

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