夏を壊しても
理科室のゆうれいと、ミズクラゲの遊泳。儚い夜の、海のおわり。ただよう。小指に巻いたリボン。赤。千切れて、しんでゆくものみたいに、だれかの、無意識の残虐。支配からはじまる、愛とか。アスファルトに叩きつけられて、砕け散ればいい。アサダさんの声がして、わたしは、目を覚ます。ボイスチェンジャーをつかったみたいな、奇妙な声のアサダさんの、鋼鉄の肉体。冬は、冷たすぎてね、触れると、皮膚が剥けるの、ドライアイスめいたアサダさん。夏はずっと、一日中、くっついていたい、保冷剤的な、アサダさん。都会の少女たちが、うつくしい蝶となる、真夜中。臆病な少年たちが、星をかぞえてる。わたしとアサダさんは、疑似セックスとして、高層ビルの屋上から飛ぶ。
夏を壊しても