月とゆりかご

 ゆるやかながら、もえているもの。ちりちり、じりじり、と。生命。誰か、という存在が、ひとりとしてまわりからいなくなるのを、きっと、にんげんはおそれていて、それは、もしかしたら、本能、細胞にすりこまれた、無意識に感じている、さびしさ。他者との関係、は、永久的課題としてつきまとい、正解も、不正解もないし、そもそも、明確な答えなど、と思うけれど、たぶん、それは個人によって異なるのだろう。大きさ、形、深度、色。など。
 やたらとねむいとき、の、眠気の原因が、女性であるが故だった場合の、すこしばかりの憂鬱。
 さびしい、という気持ちが、手の届かない彼方で揺らめいているときが、ある。やさしさをふりかざしていたいのに、やさしさに支配されるのはちょっとこわくて、わたしではない誰かを、わたしは、いつもどこかで、好きになりたいのに、好きになりすぎたくないと思っている。漠然とした不安に、丸呑みされそうな夜は、浴槽のぬるま湯だけが救いみたいに。透明な膜に抱かれて。ゆりかご。

月とゆりかご

月とゆりかご

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-05-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted