非日常6

「恋人できてん。」
「えーどっち?男?女?」
近い将来、こんな会話が男の間で交わされることだろう。

断言しよう。日の国には、男児はいない。
男らしい男はいない。
厚みがあって、多くを語らず、我慢を美徳とするような日本男児。そんな 、男を濃くしたような男を俺はお目にかかったことはない。
現実の男の、まあなんと薄っぺらいことか。
群れ、さえずりまわり、やれ女の話。はたまた、女の話。それか、女の話。もはや、動く女子会だ。
日本にはもう寿司を握れるような男前はいないのか。
って言う話を俺と友達でしてた。
「それ男前じゃなくて、板前でしょ?」
さすがに、切れ者の友人だけあって、俺の話の穴を見事についてくる。
そのさまは、まるで敏腕検事。
「俺が言いたいのは、日本男児。それはいねぇなってこと」
「日本男児はだし巻きが基本ですか?酢と米が最高の配合の酢飯を作り出すことが全てですか?
料理の究極への追求は、まわり回ってお出汁にあると思いますか?」
なんだ、こいつの板前にかける頑なな情熱は。
「ってかよ、課題やった?どうも計算結果がカノニカル分布の結果と合わないんだよな。」
「今は、板前の話でしょ?」
なんだこいつ。
俺の友人は、そこそこ変なやつだと思っていた。
ガンダムの話になった時は、彼女とのタンデムの話を熱く語り始めた。また、コンドームをつけるかつけないかの話になった時は、俺をゲイ呼ばわりしてきた。友人が言ってたのはコンシーラーだった。
因みに、友人は俺が女装してホモ行為に及んでいると解釈したようだった。
「うん…」
友人に火がつくと、ひとつの星の生命が終わるまで話をやめない。
そうだ、男は多くを語らない、我慢を美徳とする。それが、俺の座右の銘だ。だから、ここは友人のしたいようにさせておこう。
そう思った矢先、異次元空間から魔王が出てきて、魔法で友人を消した。
そして、俺の願いを叶えてくれるらしい。
俺は迷わず願い事を言った。
「彼女!女!巨乳!くれ!くれ!」
魔王襲来的な意味でも、日本男児的な意味でも日本の終わりは近い。

非日常6

つづく

非日常6

啓蒙的なお話 。おおシュール。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-11-28

Copyrighted
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