眠りの森

 倦怠感、という明確ななまえをつけて、ねむる。質素でかたい、ベッドに横たわり、きみだけが、いま、まぶたの裏にうつる、星の解放を見守っている。ロボットに、支配された街で、わたしたちだけが、やわらかなからだと、じゆうなこころをもっている。はやく、月にいきたいね。わたしたちのかぞくは、みんな、月に移住しました。わたしと、きみだけが、この星に取り残されて、ロボットたちが無表情で、充実も、退屈も感じないで、淡々と見送ってゆくだけの日々を、ぼんやりとながめている。いきている、という感覚は、どうにもさいきん、薄らいできて、ときどき、脈をはかるのが、くせになっている。まだ、脈があるということは、いきている、ということなので。ロボットたちの街は、なんだか油臭く、にんげんたちが蔓延っていた頃よりも、体感温度が低い気がするのは、二酸化炭素を吐き出していないからだろうか。ひんやりと、つめたい。春の、夜明けを想わせる。病室みたいな白い部屋で、きみとふたり、もう、ねむることしかしていない。夢だけが、やさしいから。

眠りの森

眠りの森

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted