青空

渡逢 遥

どうしようもなく苦しくなってきた。でも、まだ苦しくなれる事に救われていた。絶望すればするほど救われていた。

俺の物差しで正確に測れたものなんざ、何ひとつ無かった。感情の背景ばかりを気にする余り、感情それ自体を愛する事から避けてきたのだ。今になっていえるが、失っていい感情など、一つとしてありはしない。心は命同然だ。

偽りにも価値がある事を知った時、俺は初めて偽善者で構わないと思えた。達観したつもりで立ち止まっているより、往生際悪く走っていた方が増しだ。お前にとっての偽りが、俺にとっては真実の寄せ集めだから。

胸の空洞を吹き抜ける風を感じながら、ただ走れ。つづける事にしか意味は無い。沈黙に勝る愛は無いとわかっていても、それでも叫びつづける事が俺の正解だった。追いつく前に、どこかでぶっ倒れているかもしれない。追いついた時には、俺の無様さを笑ってくれ。

すべては、わすれない為にやっている俺のエゴだ。想いを枯らさない為にやっている、無駄かもしれない足掻きだ。それでも俺はつづける。つづけるしか能が無いから。

空は残酷だ。みつめるたびに、誰もが空の下にいる事を思い知らされる。でもいまでは、その残酷さが俺は好きだ。

ただ、走りつづけている。

ただ、名前だけを叫びつづけている。わすれない為に。

青空

青空

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-07

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