命の水

​───声が止まない。

(正常、或いは異常で在りつづけるというのは有り得ない。すべてはグラデーションに過ぎない。自分が相対性の奴隷であるという事を自覚しなければならない。「自分」という檻からは決して出られないのだという事を、いつかは受け入れなければならない。

(尺度に依存してはならない。第一、「自分」という存在は流動的なのだから、そんな曖昧なものを尺度に用いてはならない。計測や計算を止めずして博愛、ましてや自己愛の実現などは有り得ない。

(「らしさ」という虚像に依存してはならない。理想に翻弄されたくなければ、自分を規定しなければいい。また、理想に幻滅したくなければ、誰の事も規定しなければいい。規定するから差異が気になり、一喜一憂するのである。

焦燥を感じながらも、その連鎖反応を愉しんでいたのは、他ならぬ私だった。

諸悪の根源は、私だった。

(ああ、もっと飲みたい。もっと言葉が飲みたい。)

​───声が止まない。焦燥は収まらない。

命の水

命の水

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-20

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