狂気明滅

見憶えのない<もの>が

浮かんでは消え 消えては浮かぶ

まるで 明滅しているかのように。

それは そこに静止していることもあれば

ふらふらと飛んでいることもある

死に際の蛍のように、危うげに。

それは 何を意味しているのだろう?

それは私に 何を伝えようとしているのだろう?

それは何の兆候で いまはどの段階なのだろう?

だれも教えてはくれない。

何度も何度も見ているうちに

実像の全貌を掴めそうな気がする けれど

それが 破綻に至らしめる元凶であったなら?

私は 何かをすることができるだろうか?

囮などは買って出よう

そしてその怪異が だれの目にも触れないように努力しよう

たとえそれが 虚しい努力であったとしても。

私の許可なしに私から出ようとする<もの>は

ひとつたりとも逃さない、

私に傷つけられ、そして惨殺されるのは

私ひとりで充分だから。

狂気明滅

狂気明滅

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-06

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