キャロライナリーパー

お久しブリーフ。星空さんほんとお久しブリーフです。

週末分の食料を買いだめにスーパーに行くと、
「おお!」
お野菜のコーナーに卑猥な程に真っ赤で卑猥な程にいびつな形をした唐辛子が売っていた。パッケージには鳥海パレルモ(実家に帰省した際にスーパーで見た。イタリアンパプリカというものらしい)みたいなシールが張ってあり、そこに、
「これが・・・」
キャロライナリーパーと書かれていた。

「これがあ!」
ションテンがあがった。だってキャロライナリーパーだぜ。これが有名な世界一だか宇宙一だか知らないけども、辛い、死ぬほど辛い。赤子や老人に与えたら死ぬ(焼き餅とかこんにゃくゼリーとかと同程度の確率で)と言われてる唐辛子なのか。私の人生でお初だった。お初の出会いだった。出会い系サイトですげーの来たみたいにテンションが上がった。金のエンゼル出たみたいにテンションが上がった。

テレビとかの罰ゲーム的なものではよく見るが、こうしてスーパーに普通に売ってるとは思わなんだ。すっかり処方箋ないと買えないとか、そう言うもんだと思っていた。薬剤師いないと買えないとか、ロキソニンみたいなもんだと思ってた。

「へえー」
せっかくだから手に取ってよくよく眺めまわした。赤い。皺皺してる。睾丸を彷彿とさせる皺皺。卑猥だ。そんで辛いんだ。すごく辛いんでしょうあなた?辛いっていうじゃないですか。すごいんですってね。カマキリ先生の『ものすごい図鑑』みたいにくるくると回して眺めまわした。さすがに拡大縮小は出来ないけども、でも子細に眺めまわした。視姦。視姦した。手に持ってる為、先ほどからずっとそれを包んでる包装材がパリパリと音を立てていた。

「・・・」
それから一端それを、キャロライナリーパーを元の場所に戻してスーパー店内を回遊した。しかし週末何にしようか。とか、そういう事を考えるつもりが、もう頭の中はキャロライナリーパーの事でいっぱいで。いっぱいいっぱいでもう。

キャロライナリーパー。リーパー。64のパーフェクトダークの中の武器に出てきたよな。リーパー。削岩機みたいなやつ

それくらい辛いんだろうか?だからリーパーってついてるのかな?

舌を削岩されるっていう事なのかな、リーパー。キャロライナリーパー。舌を削岩するくらい辛いんだ。ひええええ!

恐ろしい。恐ろしすぎる!

そんな恐ろしい代物なんだキャロライナリーパー。すげーなキャロライナリーパー。

「・・・」
スーパーを一周して、レジに行く前に野菜コーナーに戻ってそれもカゴに入れた。それっていうのはもちろんキャロライナリーパー。

キャロライナリーパーを野菜のコーナーに入れるって大丈夫なのかな?監督責任とか。そういうのに抵触しないのかな。普通に。普通においてるけどもさ。危険物でしょこれ?

そんな事を考えながら、レジに並んだ。

なんか催涙弾とかに成分入れてるとかそういうのも無かったっけ?料理する時手袋するとか。ゴーグルもつけるとかさ。なんか。

そんな事を考えながら、お金払った。

「さて・・・」
家に帰って買ってきた食材を冷蔵庫に収納した。キャロライナリーパーももちろん収納した。冷蔵庫の下の野菜コーナーに。

「いや」
ちょっと待って。と、再び開けて、キャロライナリーパーだけ取り出す。

「赤い、皺皺してる。卑猥だ」
そんでそんな事を考えながらブツを包装材から出す。

再び手に取って眺めた。
「やりたい」
あれやりたい。料理の鉄人のあれ。鹿賀丈史さんのやつやりたい。

いや馬鹿やめろ。鹿賀丈史だぞ。いや鹿賀丈史さんじゃないよ。キャロライナリーパーだぞ。キャロライナリーパーをそうやってかじるってなんだよ。死ぬぞ。ふざけんなよ。死ぬ。死なないにしても口と喉、胃、腸、小腸も大腸も、そんで尻、肛門。これらが爆発する。

絶対に爆発する。

爆発四散する。

それって結局死ぬっていう事じゃん。

「でも」
でもやりたい。だってブログに書けるじゃん。
『今日はキャロライナリーパーをかじりました』
って。

書けるじゃん。

そんで、今日あったほかの事は明日の分に回せるじゃん。

「あああー!」
かじった。キャロライナリーパー。目を瞑ってかじった。

そんで爆発四散に耐えた。

・・・、

「あれ?」

爆発四散しない私。あれ?

あと、

「辛くない」
え?なんで?

キャロライナリーパーだぞ?

包装材に貼られた名前に再び目がいった。その瞬間噴き出した。
「ええ!?」

キャロライン・フィーバーって書いてた。

そしてそれは生産者名だった。キャロライン・フィーバー。キャロライン・フィーバーっていう生産者だった。

ただのパプリカだった。

単なる鳥海パレルモみたいなやつだった。

いや鳥海パレルモには悪いけどもさ。イタリアンパプリカじゃん。そんで生産者じゃん。キャロライン・フィーバーじゃん。またじゃん私。

カタカナ適当に読んでる病じゃん。

「・・・」
キャロライン・フィーバーって誰だよこの野郎!

キャロライン・フィーバーの事を想像した。

キャロライン・フィーバーでいやらしい目に合う薄い本が作れるなら作りたいと思った。もしそうなったら酷い目に合わせてやろうと思う。

キャロライナリーパー

キャロライナリーパー

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-05

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted