三月一日
海の気配。夜、きみがのこした手紙の断片に、花の香り。夜。左脚から、すこしずつ腐っているのは、わかっている。おわらない今日への、懺悔と、おかあさんというひとへの、ささやかな祈り。おかあさんを、海として、ぼくたち生命体の、すべてのおかあさんである存在に、跪く瞬間、左胸がひやっとする。
おめでとう。
あたらしい気持ちで、明日を迎えるひとがいて、ぼくは、そんな、ありきたりなことばでいえば、希望を抱いたひとたちに、純粋なる、おめでとう、を伝えたい。みんな、生きていれば、いいことあるって。ちょっと、軽々しく聞こえるそれが、あんがい、生きることにつかれたひとの心に、すっと入りこんで、凝り固まったものをやわやわに、やわらかく、する。ときどき、無性に食べたくなるジャンクフードの方が、なんだかごちそうみたい、と呟いて、きみが、ハンバーガーを食べていた二十三時のことを、回顧する。もうすぐ、桜の季節。
三月一日