水源地より

はぐれてしまった、さっきまで

手を繋いでいたのに​────誰の?

その手の温度を 感触を

思いだす事ができない、その手は

僕の熱で 解かされてしまったのだろうか

あるいは僕の熱がみせた 幻だったのだろうか

(それは簡単に砕ける 砂糖菓子のような脆さだった

孔より罅を恐れた​────どうして?

痣に耐えうるだけの力が無かったから

早く貫いて欲しかったんだ

(僕は急かした でもきみは応じてくれなかった

(もしきみに急かされたら 僕はすぐに応じたのに

僕は平穏が怖かったんだ

最初はあんなに 憧れていたものだったのに

(憧憬の機能不全は 僕だけを不感症にさせた

いつからか僕は 追われる側になっていた

印象だけの亡霊たちから 逃げ惑うようになっていた

(僕が欲していたのは それらだったのに

(なぜこんなに怯えているんだ?

僕は幸福な時ほど死にたがっていた

これが終る前に終らせてしまいたかったんだ、みずからの手で

​────水源地から聞こえる叫びは

ひとりではなかった

僕は はぐれてしまったわけではなかった

平穏という眩しい地獄の中で

きみは僕の影を踏みつづけていた

水源地より

水源地より

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-22

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