仮面生活

注意事項
①米印はト書きです。読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③この作品は、男性3人、女性2人、不問1人の合計6人の声劇です。
④少々グロテスクなシーンが出てきます。ご注意ください。
⑤ナレーターの部分は性別による言い換えはOKです。

仮面生活

〔登場人物〕
・タカフミ/♂
・アズミ/♀
・マオ/♀
・サダオ/♂
・ユウヤ/♂
・ナレーター(N表記)/性別不問


N:人は誰しも、他人に見せたくない事を抱えている。例え相手が家族だったとしても。表向きは真面目に振る舞っているが、裏では闇の力を借りたり、悪事を働かせていたり、道徳観の無い行為に及んでしまったり。

“コンプレックスを隠していたり。”

本当の顔は誰にも見せたくない。いや、見せられない。

“周りからの印象が悪くなるから。自分の非を認めたくないから。”

タカフミ:俺は周りからの視線程嫌いなものは無い。注射や昆虫、動物は平気だし食べ物も苦手なものは無い。

唯一の弱点こそ、“他者からの視線。”近所を歩く事だけでもかなり気にしている。いつ何時(なんどき)でもマスクとサングラスはかかさない。例え深夜でさえもマスクとサングラスは肌身離さない。警察に職質を何回も受けてきたがその時だけは何とかして素性(すじょう)を明かしている。流石に警察を相手取るのはバカバカしい。


N:過度な照れ屋と形容すべきかビビリと形容すべきか。タカフミはもともとそのような人物だった。
彼は、一応はビジネスマンである。社内では流石にサングラスは外すが、移動中は常にフル変装。誰も彼だとは認識しない。でも、それでいい。彼にとってはそれが良いのだ。

ユウヤ:アイツ、また変装してやがるよ。勤務中にする必要はあるかね?

マオ:流石にやりすぎよね。屋外で活動をしているわけじゃないし何か目の病気を抱えているわけでもない。流石にサダオ部長に相談よね。

ユウヤ:だな。これはアウトだ。

タカフミ:(ヤメテクレ…。俺を見ないでくれ…。)

アズミ:…。


ユウヤ:アイツ、また顔を下に向けてるぜ?眠いんじゃないの?www

マオ:かもねwwwww

タカフミ:…。


N:タカフミは、こんな日常を悶々と過ごしていた。


サダオ:(タカフミ君…。)


N:心配している人だっている。


ユウヤ:んじゃ、俺はこの辺で。

マオ:私も失礼します。

“ユウヤさん♪一緒にご飯逝きましょ?”

ユウヤ:そうすっか。ちょうど腹も減ったし。

タカフミ:(早く帰ってくれ…。急いで仕事を済ませたいんだ…。)

サダオ:帰ると決めたらさっさと帰れ!残業代ゼロを目指しているのに何様のつもりだ!!(怒)

ユウヤ:…すんませんした。

タカフミ:(サダオ部長…!)


N:ユウヤとマオは致し方なく退勤。


アズミ:タカフミさん、今日も一日お疲れ様です♡

タカフミ:ありがとうございます、アズミ先輩。

アズミ:いつも顔を隠しているけど、何か言いずらいことでもあるの?

タカフミ:え、えぇ。まぁ。

サダオ:アズミ君。あまりプライバシーに引っかかることは避けた方が良いぞ。

アズミ:サダオ部長!

サダオ:私は、何故彼がこの状況に陥っているのかよく知っている。

“アイツらのせいなのだがな。”

アズミ:先に帰ったあの2人?

サダオ:そうだ。

…ま、ここで語るのもあれだ。移動しよう。

タカフミ:…大丈夫です。


N:すると、タカフミは自ず(おのず)とマスクと眼鏡を外す。

“見るに堪えない顔面である。”

アズミ:!!

サダオ:アズミくんが驚くのも無理はない。

“奴らにとっては、これくらい朝飯前のことなのさ…”

アズミ:(酷い…、酷すぎる…。)

サダオ:タカフミくん。

“例の件、話をしても良いだろうか?”

タカフミ:もうこの時間になればこの部屋には我々3人のみ。問題ないのでどうぞ。

サダオ:ありがとう。

では、私の口から話すとしよう。

アズミ:お願いします。

サダオ:実は、彼は幼いころから虐(いじ)めを受けていたんだ。幼稚園児くらいの時からね。


N:時は20年ほど前。タカフミが幼稚園の年中半ばの頃。ユウヤが彼と同じ幼稚園に転入。2人は他クラスだったはもののユウヤにいいようにされ続けていた。ガキ大将よりもかなり酷いと言わざるを得ないほどに。

ユウヤ:お前、これくらいの事もできねぇのかよ!ダッセぇ~wwww
しょっぼ!

タカフミ:…別に僕はユウヤ君と同じじゃないから、できないことの1つや2つはあるんだ。逆上がりはできないよ?登り棒だって登れない。

…でも、それの何が悪いの?僕何か悪いことしたの??

ユウヤ:お前は普通の子供じゃねぇってわけだよ!
運動神経悪いし、ずっと家で過ごしてるんだろ?

“俺なんて、東京ディズニーランドやシーに何回も行っているんだぜ?今年だけでも、5回は行ったな。”

タカフミ:でも、それとこれとは関係ない!!

ユウヤ:お前ん家、貧乏なんだろ!!!

タカフミ:…う、うぅ。(泣)


N:年長の頃はもっと酷かった。

“一生癒えぬ傷が生まれてしまったのだ…”

マオ:ユウヤ!またタカフミ一人で砂場に籠ってるよ。
馬鹿みたいwwww

他の子たちと遊べばいいのにねえ。

ユウヤ:本当だな!wwwww

タカフミ:…!!!!
(※かなりイラついてます)

“僕の自由にさせてよ~~!!!”

ユウヤ:うっせぇ!!!!

“お前は砂と一緒に還(かえ)るんだよ!!”


N:ユウヤ、タカフミをフルボッコ。泡も軽く吹く状態にまでコテンパンに。

マオ:あら、蟹さんみたいに泡をふかしちゃっているわ♡

早く海辺に戻してあげないと!

ユウヤ:全身を砂まみれにさせりゃいいんだよ!


N:タカフミの顔面には至る所に傷やこぶが。口元も見るに堪えない姿となってしまった。

念のため救急車に乗せられ何とか助かったはものの、医師からも後遺症が一生続くとのお話が。小学校に入学してからというもの、ずっとボロボロの顔を世間の目に触れさせるわけにもいかず、ひっそりとした生活を送っていたのだ。それが今でも続いている。


サダオ:というわけだ。この話は、以前にタカフミ君と話をして、いざという時に、たった一回きりでOKという許可を受けたからここで話したのさ。

アズミ:そうなの?

タカフミ:その通りです…。


N:タカフミ、素顔を晒す(さらす)。

アズミ:た、タカフミくん…。

サダオ:…確かに、これは一生癒えないだろうなぁ。
そりゃあ上層部が特別な許可を出すわけだ。

タカフミ:…。

サダオ:でもな?

成績は例のクソカップルよりも断然に上だからな?
地頭(じあたま)も良いし判断能力も高い。

アズミ:確かに。負けず嫌いですもんね。

サダオ:私は、そんな君を評価する。アズミ君も彼のことを思って・気にしているみたいだからな。安心材料があるということは武器を所持しているのと同じだ。


N:安心材料がある。上司も気にかけてくれる。
ここまで素晴らしい企業は現代世界にいくつあるのだろう?

サダオ:よし、時間だ。我々もあがろう。

アズミ:そうですね。帰りましょう。

タカフミ:部長、先輩。

アズミ:?

サダオ:どうした??

タカフミ:“先輩!部長!

今日はありがとうございました!!”

サダオ:別に君は気にすることなんてない。

“休み明けに、少しやりたいことがあってね。”

アズミ:そうよ。気にしたら負け。

美味しいものでも食べて気分転換しましょ?

タカフミ:アズミ先輩。

“何か奢ってください!”

サダオ:(素直だなぁ~www)

アズミ:いいわよ。最近できたお好み焼き屋さんにでも行きましょ?

タカフミ:はい!!

サダオ:なら、私も行こう。生憎、今日は妻と息子が子供会の旅行でいないんだ。

“私が奢ろう。アズミ君の分もな!”

タカフミ・アズミ:“ありがとうございます!!”


N:その後、食事をしながら談笑した御一行(ごいっこう)。

サダオ:(さて、私から奴らに制裁を…。)
(※かなり低めの声で脅すイメージ)


N:それから2日後の朝。職場にて。

サダオ:マオ君、それにユウヤ君。

マオ:はい、部長。

ユウヤ:我々に何の用でしょう?


サダオ:そういえば、お前ら2人は“石龍影也(いしたつかげや)”って人を知っているかい?

マオ:かげや、さん?

誰ですか?その方は。

ユウヤ:…!!

サダオ:どうやら、ユウヤ君は気が付いたみたいだな。

言ってみなさい。

ユウヤ:…さ、サダオ部長の息子さんです…。

“過去に我々2人が暴行を加えた相手の1人”

サダオ:ユウヤ君。他に何か覚えていることは無いか?

ユウヤ:…。

マオ:タカフミを暴行しました…。

サダオ:…実はな?
その“影也”って人物、

“私の息子なのだ。貴様らと同年代のな!”

ユウヤ:(ついに言っちまうか…。聞きたくなかったぜ…。)

サダオ:我が息子が、我が息子が。我が息子が!!

“一昨日に亡くなっちまったんだよ!!!”
死因は暴行による障害だそうだが、間違いなく過去の古傷が原因であると言っていた。

貴様らは、過去にもタカフミくんを暴行させていたそうだな。

マオ:…。

ユウヤ:…はい。


サダオ:“貴様らまとめてクビじゃ!!もうここで働くな!!!”

N:出禁を言い渡され、過去の事件を掘り返して解雇通達。
子供の頃と言っても大けがをさせているのだから避けては通れないのであろう。

彼らはその日・その瞬間を最後に会社に来ることは無かった。
結婚はしたらしいが、“犯罪者夫婦”というレッテルを張られたことにより山奥で静かに過ごす羽目になったそうだ。

…と言いたいのだが、逃げた先にも彼らの被害者の“遺族”が。住む余裕なんてどこにも無い。毎日毎日どこかしらに逃げ回っている。


サダオ:これで厄介者は排除できたかな?

タカフミ:あ、あの…。

サダオ:ん?どうした??

タカフミ:亡くなってしまった息子様の損害賠償は?

サダオ:なぁに、給与からとっくに減らしているさ!

アズミ:どういうことですか?

サダオ:上層部に報告したらさ、賠償金用に入社した瞬間から毎回給料の一部をそれのために回収していたのさ。かなりの額ねw

それで、最期の給料はゼロ。一円もないさ。
これで少しは反省するだろ。

アズミ:だといいですね。

タカフミ:大丈夫です。

私からも、別で賠償請求しておいたんで。

アズミ:そう簡単に逃れられない、ってわけね。

タカフミ:“地の果てまでも俺は追いかけてやる…。覚えておけ…。”
(※かなり低めの声で脅すイメージ)


N:皆さんも、誹謗中傷はやめてくださいね。もし子供がいらっしゃるのであれば、虐めなんてしないようによ~く注意しておいてくださいね。

タカフミ・アズミ・サダオ:“よろしくお願いします!”

仮面生活

訂正情報
・2月8日(月) 本文の一部を修正。

仮面生活

”黒歴史”というワードがあるように、人には言いたくない・言いずらい過去がありそれを引きずる方も数多。これは、そんな過去と戦いながら前向きに生きる1人の男性の物語。人によっては、考えさせられるかもしれません。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • サスペンス
  • 青年向け
更新日
登録日
2021-02-07

CC BY
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