『花の惑星』

利用者M

「これはなあに?」
花だよ。香りがするでしょ。
「ふうん」
触ってごらん。
「……痛い」
小さい棘があるものもある。気をつけて。
「どうして?」
何が。
「どうして、花を、私に。私は目が見えないのに」
どうしてかな。考えてごらん。
「わからない。いじわる?」
そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。
「いじわるだ、きっと。みんな、そうだったもの。私は目が見えないから」
……。
「どうして笑うの?」
どうしてかな。考えてごらん。自分で。
「いじわる。また、笑う」
花でも触る?
「うん。やわらかくて、いい匂い」
そうだ。
「でも、私には見えない」
うん。
「見えないよ」
そうだね。
「すごく哀しい。あなたも、私には見えない。哀しい。助けて」
……花をあげる。
「いらない」
あげるよ。いくらでも。
「いらない。どうせ、見えないよ。何も」
花が、今の僕が君にあげられるものだよ。はい。あげる。
「どうして、助けてくれないの?」
見えないことで、見えてくることもある。
「え?」
見えないものも、大切だよ。
「わからない」
そうか。
「また、笑う。いじわるだ」
わかるまで、花を降らせてあげる。
「……どうして」
忘れないで欲しいから。
「何を」
考えてごらん。さあ、花が降るよ。君の世界に。
「おかしなひと」
君がそう思うなら、そうなんじゃない?
「また……」
笑う?
「うん。顔が見えたら良いのになあ。あなたの」
……。花があるよ。此処には。時間も、ずっとずっとたくさんある。あの頃よりも。
「うん、ありがとう」
いいえ、どういたしまして。


追記

『ある作業療法士さんへ』


これが今の私に届いたあなたの支援です。
ありがとうございました。
綺麗な遊園地よりも私に合った柔らかい世界です。
サンタクロースみたいな支援者でした。
いないけれど、いる。
やっと見つけることができました。
きっと、いつか、褒めてくださいね。

『花の惑星』

『花の惑星』

「……それでも人生にイエスと言おう」

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-01-23

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