もうすぐ雪が降るよ
ふたりぶんの温度だけ、あのばしょにのこっている。
空気がつめたいのは、季節が冬のせいで、どうぶつたちが夜になると泣くのは、この星がいま、すこしだけ病んでいるから。なんだか、ブーツがきついのは、さむいためにはいた毛糸のくつしたの厚み。外国からきたグリズリーがやっている、スープの専門店で、海老のビスクを注文する、きみと、かぼちゃのポタージュを注文する、ぼくが、絵本のなかの、ほっこりした光景みたいだって思った一瞬。ちょっと笑った。好きと信仰心はべつもののように、きみに対する好きと、あのひとに対する好きは異なるし、あいしているからしにたいのと、あいしているからころされたいのも、またちがうもので、世の中、なんでもそうだろうと思う。もうすぐ雪が降るらしい。この街には、よく似合っている。崩れかけたビル、荒れ果てた家、寂びれた教会。朽ちたアスファルトと、剥き出しの鉄筋、ときどき、にんげんの骨にみえる。ぼくらはスープを飲みながら、いまさら、世界のことを想う。
もうすぐ雪が降るよ