冬にみる夢
ひまわり、夏の、土のうえで横たわり、腐って、冬。きみが、あの、半透明の少女とあそんでいたのは、氷点下二度の日。街が、いずれは朽ち果てることを予言する、占い師が、商店街のまんなかあたりの、昭和を感じさせる洋装店と、薄汚れたゾウの人形がいる薬局のあいだの、細いすきまに、いる。二十一時。照明は青白さを際立たせる、まるで病弱な、フライドチキンのお店の前でいつも微笑んでいる、おじいさん。朝になったら、きっと、無酸素状態の、ぼくの部屋で、どうか、ちいさな赤い彼だけは、生きていてほしい。屋台の、おおきな四角いタライのなかで、怯えていた彼を、ぼくは救ったつもりでいるのだ。かよわい生命。子どもたちの、かなしみがつめたい刃となって、森を突き刺した。こわいよ、と、淡々という、きみ。星のおわる夢ばかりをみている。海の底から、ときどき、悲鳴のような声がするから、ぼくは、海が好きではなかった。夏の残滓。腐ったひまわりも、蝉の亡骸も、冬の土壌で養分となる。それは、おそらく、未来のぼくらも。
冬にみる夢