思い

月明かりに 浮かぶ
一艘の 閉ざされた
部屋の片隅に 眠っていた
ひとつの 写真機
親の寝静まるあいだ
だれにも言わなかった 旅へ
出発する前 さいごの
片付けをする夜を
考えてください
これからお別れをする 何枚もの
思い出をめくる
ひとつのいのちである わたしを
考えてください

いま 写真を削除しようとする
わたしの この手は
ふるえて ふるえて
うまく動きません

ああ 月よ いかないで
あとすこしで整理は
終わりますから

思い

思い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted