いぬ

大好きなわたしのいぬ
なかないで
わたしが帰ってこなくても おねがい
いま おまえの黒く澄んだひとみにうつる
庭の月桂樹のこずえに
雪が積もった日
おまえとかけ回った ひかりのつめたさを そして
ぴったりと寄りそって ひなたぼっこをした
ひかりのあたたかさを
よい子 忘れないでくれ あの日々は
なによりもうつくしかった
晴れた日も 雨の日も おまえといっしょにあるいた
この散歩道に咲く花々とも
あした別れなければならない
ありがとう 大好きなわたしのいぬ
ああ ことばは伝わらなくても
ちゃんとわかっている
わたしのなみだを
わかっている
わたしたちは ほんとうは
どこへも行きたくないのだ
だから さいご
ゆくまえに
わたしのすべてのやさしさをもって
よい子
おまえをなでよう

いぬ

いぬ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-04

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