高校三年生

 野原に、少女たち、破滅とは、恋であるのだと語る、神さまに見初められた少年と、こぐまが、おそらく、宇宙でいちばん純粋な愛を、つらぬいている。ばかみたい。愛、とか、と、わたしは、つばを吐きたくなる系の、やつで、ことしは、もう、とにかく呼吸をしていれば、いいと思っている。それだけで、救われた気持ちになるのならと、心理カウンセラーぶった、あの子がいうの。ほんとうは、ちょっと、むかつくのだけれど。
 シュークリームを買った。お正月だから、という理由で、なんだかスーパーマーケットに売っている、おそうざいや、甘いものが、みんな、たべたい気分になっちゃうの、って、やっぱり、お正月だからだと思うし、お正月だからいいよね、とか思っちゃう。あと、わたし、受験生だから、がんばって勉強するために、英気を養わなくては、なんて、言い訳つくってる。ダイエットに、なかなか踏み切れないひとみたい。テレビの特番、おもしろいのはさいしょだけのとき、ある。あの子の好きなアイドルグループが、出ている番組を観て、あの子が好きだといっていたなまえのひとじゃなかったけれど、きっと、あの子は観ているのだろうし、でも、わたしには、ちょっとにぎやかすぎて、あわなかった。あと、あの、笑い声の音をいれているの、実際、そこにいるのは、数人の芸能人なのに、大勢のお客さんが笑っているように音をつけるの、ときどき、興ざめする。
 おかあさんが、勉強はしなくていいのときいてくる。
 おとうさんが、受験生だって正月休みはひつようだろうといってくる。
 お姉ちゃんは、わたしが微妙と思ったテレビ番組を観て、げらげら笑っている。
 すこしだけ死にたくなった。一月二日。

高校三年生

高校三年生

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-02

CC BY-NC-ND
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