わたしたちの生活
てのひらのなかの惑星、冬の冷たさ、さばくにいるみたいに。やさしかったひとたち、みんな、神さまのつくった、地下シェルターで守られている。この街の神さま。わたしと、ノアだけが、シェルターに入れてもらえなくって、仲間はずれにされたもの同士、ふたりで生きているので、クリスマスも、年末も、お正月も、ふたりきりです。わたしとノア以外、だれもいないのに、信号はちゃんと、赤から青に変わるし、スーパーマーケットの商品は毎日補充されている。本屋さんには、あたらしい雑誌が並ぶし、洋服屋さんの洋服も、季節にそって入れ替わる。セーター、ダウンジャケット、裏起毛のズボン、ロングブーツ。夏には、浴衣や水着が売っていた、店員さんはいないけれど、ちゃんと、わたしたちはお金を払って買っている。仕事をして、だれもいない職場で、けれど、いつものように仕事をして、お給料は、毎月決まった日に振り込まれている。こわい。と思ったのは、さいしょだけで、これもぜんぶ、神さまのせいねって、わたしと、ノアは、信じることにした。そもそも、神さまが、わたしたちの生活を保証することは、あたりまえのことで、だって、わたしたち以外の街のひとたちを、みんな、シェルターに連れて行っちゃったんだから、わざと街に残した、わたしとノアの面倒を、さいごまで見てもらわなくては。生きていけないもの。ひととして。
どこかの街でつくられたテレビ番組を、観ている。
しらない土地のできごとを、インターネットで知る。
わたしたちの街だけが、神さまに選ばれた。これは、喜ばしいことなの?
ノアは、さいきんデビューしたアイドルの男の子たちに、夢中だ。都会から発信される、さまざまな情報に、おそろしく静かなこの街で、わたしとノアだけが、踊らされてる。ノアはその男の子たちのために、おなじCDを何枚も買う。
わたしたちの生活