幸福の影

幸福に怯えているんだね

これ以上悪くならない場所にとどまりつづけることは

安定と安心をあたえてくれるだろう

不純な安心と、安定的な不安定を。

本人には決してそれが

不純であるとも

不安定であるとも見定めることができずに。

幸福を憎悪して

独善的な言動に走るきみは

誰に裁かれるべきでもないと僕は思う

きみはきみの真実を貫いているだけだから

誰に咎められるべきでもないと僕は思う

誰よりも幸福を憎悪しているのは

一度も幸福になったことのない人間ではなく

一度でも幸福の味を知ってしまった人間だ

事実としての幸福と

予兆としての幸福を持て余している人間だ

幸福なんて言葉に 不幸にも出会ってしまった人間だ。

幸福の影

幸福の影

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-28

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