神さま

祈りを奪われてしまったきみよ
きのう買ったばかりの一条の あたらしい
雪白のロープを握りしめ
なにかに追われるように きみは
雨のなかへ飛び出した
薄墨いろの雨を降らす あの
雲のむこうにまします
ああ 神さまよ
濡れた鉄紺いろの
ひときれの石のうえに
よろよろと立ったきみが流す
さいごの そして ほんとうの
ひとしずくの涙をもらおう
祈りを奪われてしまったきみよ
きみがロープをかける この
一腕の桜の木の枝が折れないことを
わたしはいま こころから祈る
そうだ きょうほんとうに
きみは祈りを失ってしまう

神さま

神さま

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-20

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted