十二月のテレビの向こうは幻想
暗闇は、どこか、紫色で、わたしたちは、知らぬ間に影に、支配されている。幻想。だれかのうたう世界平和に、同調するひとびとが、きょうも無自覚に、だれかをころしている。無法地帯のオンライン。知らないひとでも、とりあえず、にんげん、と繋がっている安心感、みたいなものをえて、まんぞくしている現代人と、みんなが観ているから観なくてはいけないという、妙な使命感を駆り立ててくる、流行りの映画。ひとりはこわいけれど、みんながいればこわくない理論で、正義をふりかざしている。電子の海に潜む魚たちは、群れる。
これは、すべて、テレビの向こうの、おはなしでした。
夜も、それなりに深まった頃に、塗る、爪。冬らしく、ダークカラーに。窓の外は、雪で、雪の白をぱりっと明るくみせるような、ボルドー。すやすやと眠る、愛しいひとが、あたたかなお布団にくるまって、きっと、どこまでもやさしい夢をみている。ときどき、うつくしい音色がきこえてくるのは、北の国からやってきたペンギンたちの、ささやかなパレード、楽隊、ひとびとの眠りを妨げない、寧ろ、眠りを誘うようにおだやかな、音楽。こもりうた。テレビや、インターネットとは、近しくも遠く、適度な距離を保ち、この町のひとたちは、それよりも、本が好きで、友人や家族、恋人との、おしゃべりが好きだ。ペンギンたちが雪を踏みしめる音や、きみの寝息が、そっと、わたしの鼓膜を撫でる。十二月。
十二月のテレビの向こうは幻想