透明に

透明になりたい、そう思えば思うほど、影は濃くなる、拡がっていく。

だれにも、だれにも見られたくない。気づかれたくない。ただ、それだけなのに。

だれにも、何にも気づかれないほど、透明に、透明に、透明に。

あなたの優しさが苦しくなってしまった時には、もう遅かった。

あなたを好きなままで、あなたの優しさだけを嫌えたらよかった。

けど、そんな器用なことはできなかった。わたしは、

わたしが思っていたより、あなたに深く寄りかかっていたから。

あなたの優しさを無防備に受け取って、それを幸福と呼んでいたのは

ほかでもない、わたしだったから。

わたしはいま、他人の幸福の中で孤立している不幸な人間だ。

隣にいるだけで相手の幸福を損ないかねない、不幸な人間だ。

わたしは、負けてしまった。不幸にも、幸福にも負けてしまった。

わたしが一途に護ってきた世界は、ほんの一瞬のうちに侵されてしまった。

わたしが築き上げてきた理想は、損なわれてしまった。

こんな惨めな気持ちになるなら、はじめから何も期待しなければよかった。

それなのに、わたしは無様に懇願している。嘆願している。

それが叶ったところで、何も覆らないというのに。

透明になりたい、透明になりたい、透明になりたい、と。

透明に

透明に

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-15

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