グラタン愛

 エラーコードが、いつまでも、あたまのなかにのこってる、わすれていいのに。七桁。むかし、婚約者と交わした指輪を、いまでも、ふつうに所持している、せんせいが、ぼくは、なんだか、腹立たしいのは、単純で、明快なる、嫉妬。婚約者って、そういえば、北の、つめたい海で、海底調査をしていて、それで、そのまま、おなじ調査隊のひとと、好きあって、一緒になったと聞いている。つまり、せんせいは、浮気をされて、捨てられたのだと、にべもなく言えば、ぼくがとんでもなく、悪いヤツみたいだから、だまっている。冬になると、はげしく、グラタンを食べたくなる感じ、わかってくれるのは、せんせいだけなので。せんせいと食べる、グラタンならば、コンビニのでも、ファミレスのでも、美味しいと思うのだ。ときどき、きまぐれに、エッチなことをしたがるのも、そういうのがあるから、ゆるせるよ。好きだから、という、大前提はあるけれど。もう、恋人でもなんでもないひとと、むかしに交換しあった指輪を、たいせつに持っているような、なんだかちょっと、きもちわるいかも、と世間からは思われるかもしれない、そんなおとなと、憚らないでエッチをするのって、どうなの、って疑問を、でも、せんせいの愛撫は、すべて、ふっとばしてしまう。道徳観とか、倫理観とか、そんなものは、みんな、ばりばりと無残に、剥がし落としてしまう。せんせいの指使い。ホワイトソースの海からすくいあげた、マカロニを、一本、一本、大事そうに食べる、せんせいを見つめて、そのマカロニになりたいと祈る。これはもう、愛でしょ。

グラタン愛

グラタン愛

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-13

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND