世界って
詩をうたっている、こどもたち、朝焼けの頃に、きえる。
きっと、やさしい誰かが、ぼくたちを揺り起こしてくれるから、あんしんして、ねむろう。おやすみ。氷点下のベッドは、すでに、麻痺している身体では、ただ、かたいだけのものである。海のむこうで、いまも、かなしい戦争がなくならない、世界で、おなじ空の下、平等でなくては、おかしいのに、国境、大陸、文化のちがいによる、平等、というものの、基準が、そもそも異なることを、みんな知っていて、みんな知らないふりをするのね。幸福もそうだよって、きみはいう。信じているものが、ちがうからねって、ときどき、そういう言い方をする。学校にやってきた、アイスクリームを売るくまも、そういえば、なんだか、そういう感じだったことを思い出す。むずかしいよねぇ、レンアイって。となりのクラスの、けっこうかわいいって評判の女子の、恋バナを、くまは、まるで、恋愛をじょうずにできるひとみたいな面持ちで、きいていた。チョコミントが大人気で、ストロベリーと、あと、キャラメルがよく売れるんだよと、おしえてくれているときのように、恋愛相談にのっているくまは、ぼくらの知らないことを、たくさん知っているといった感じの、くまだった。その女子は、通っている塾のせんせいのことが、好きらしかったけれど、ぼくには、どうでもよいことだった。あんまり売れないんだといっていた、モカが、ぼくはいちばん好きだった。
こどもたちの詩は、ときどき、こわい。
夜にきくものではないと、ひそかに思っている。
こどもたちは、じつに、楽しそうなのだけれど、その、夜にふつりあいな無邪気さが、こわいのだ。
声変わりしていない、男の子なのか、女の子なのか、わからない声が息を吹きこむ、誰かの詩。だいじょうぶ、おそろしいものはすべて、かくしてあげるから。
そうやって成り立ってんだよ、世界って。
世界って