冬の光について

冬の光について

冷たい温度のことを冬だと定義するならば、怜悧さに満ちていて冬はきれいだ。どこか、遠くの国から誰かがやってきて、天使でも死人でもかまわない、ただ、ぼくを賛美するためだけにやってきていて。ぬくもり。塾の向かいの居酒屋は賑やかで、このなんの罪もない事実が中学生たちを一そう寂しくさせていたよ。これがぼくのぼくによるぼくのための現実。
クオリア「命もわたしも平等に聡明で透明」
貴いんだ、と負け犬の遠吠えよろしく叫ぶ。ぼくは、自販機で温まった微糖のコーヒーをぼくの生命だと勘違いしていた。特急列車が過ぎていくのをぼーっと眺めることで息をしていたら、叱られるかな。乾燥したホームの中は、風邪の菌と天使でいっぱいだった。帰郷。そして、分裂していくぼくらに乾杯。崩壊していくぼくらに乾杯。ぼろぼろこぼれるのは、涙でも感情でも欲望でも文字でもよかったから。たたき起こされることもなく、返答されることもなく、死んだのか眠ったのかわからない。かなしいけれど、何千何万何億何兆光年先までずっとずっとかなしいけれど、星空文庫だけがぼくらの星空。

冬の光について

冬の光について

かなしいけれど、何千何万何億何兆光年先までずっとずっとかなしいけれど、星空文庫だけがぼくらの星空。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-12-04

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