やさしいの小舟
ふたりぶんの重みで、けれど、浮いている。
カステラのきいろにみせられた、木曜日の夜に、弔う、花と、虫。冬がもう、すぐそこにいて、つらいことはすべてかなぐりすてなさいと、やさしいだれかにささやかれる。きみのくちびるが、細雪となって霞んでゆくのを、ぼくは、いつくしんで、もてあまして、はかなんで、むなしく思う。つめたいアスファルト、じゅうこうな首都高速、つらなりにじむ、赤い光、テールランプ、恋のはじまりとおわり、あいをしんじているひと、あいにうらぎられるひと。
夜の始発と、終着。
二十一時の喫茶店で、ホットケーキを食べてる。
プリン・ア・ラ・モードを、きみは、じっくり味わっているので、すべてにおいて、なんだかいま、この瞬間、幸福、みたいな感じが、ここちいいときもあれば、むなくそわるい日もある。ハッピーになれる元気ソング、という音楽番組の特集に、すこしだけ、すくわれる夜も。ダウンロードしてまで聴くほどでもない、そういうの。
淡く、慎ましやかに、そこにあるもの。
やさしいの小舟