一瞬見間違えまして

『ふくろう、みんなで、安心なまち』
自転車で買い物に出かけて、その帰り道交差点の所にそのような標語が張ってあって、え?ってなった。
「ふくろう?」
もしかしたらちょっと気が急いていたのかもしれない。寒さも影響していたかもしれない。信号が点滅していたことも関係あるかも。
「とにかく早く、なる早で家に帰りたい」
って思ってたから。

昨日とかまで天気が良かったのになあ。今日は曇天。寒さも相応。先週はあったかったのになあ。こんな感じが一年中続けばって思ってたからなあ。だからかな。ふくろうに見えた。

しかし、信号をなんとかギリで渡って改めて見てみると、つくろうだった。つくろう、みんなで、安心なまち。ああ。そらそうだよな。ふくろうってなんだよな。ははは。

顔には当然何も変化はない。え?ふくろうってなった変化もないし、なんだよそうだよ、つくろうだよ。ってなった変化もない。機微もない。微塵もない。外でそんなにコロコロ表情変えたりしない。変な事したら不思議ちゃんって言われちゃうだろ。不思議ちゃんだったらまだしも、危ないって思われるかもしれないだろ。今も昔も今後もごめんだけども、なんか事件を起こしたりしたとするよ。人刺したりとか、殺したりとか、その時それを見ていた人にインタビューされたとしたら言われちゃうよ。

「あの人は言動がおかしかった」
って。

それだったらまだ、寡黙で人付き合いが苦手そうで何を考えてるかわからなかったって言われる方がマシ。どう考えても。言動がおかしかったって言われるよりも。

ただ、その後も家までの間、脳内でふくろうの事は考えてた。

「つくろう、みんなで、安心なまちを、つくろう、みんなで、安心なまちと見間違えたこれ」
これ、なんか話にならないかなって。なんかお話に。

梟。

梟で何か。

何かないですか?

当然生物などの事も何も知らず。梟って言われても鳥。首がすごい回る。目が特徴的。くらいしか知らない。ウィキで調べてなにがしか情報を得ることは可能だとは思うけど、そこまでしなくても何か。何かありませんか。梟。私。何か。せっかくだから。お話。

お話にならなかった場合は、緑、アメブロで書くことになるという手段もある。

「今日、買い物に行ったらつくろうをふくろうに見間違えて、えーってなりましたww」
つまらない。

何だこれは?

自分を何かと勘違いしているんじゃないか?何かこう、何書いてもアクセス数が阿保みたいな感じに伸びる有名ブロガーとかと勘違いしてるんじゃないのか?ブログを本にして出版しちゃうような何かと勘違いしているんじゃないかこれは?

そんなの書くくらいなら、
「お酒飲んで寝てました。いつもの感じでした」
って当たり障りない事書いてた方がマシだ。馬鹿か!

という訳で、この出来事はお話に昇華できなかったら捨てられる代物だった。嘘でも1000字~2000字程度の何かにして、なろうか星空さんにでもあげれなかったら、心の中のディスポーサー行きになる事案だった。

ディスポーサーに捨てられて酸で溶かされて、姿形も認識できなくなり、やがて記憶の中の光の当たらない部分に流されて行って、そしていつか忘れられる。運が良かったらそこからまたサルベージできる。あるいは自動サルベージ機によって浮上してくるという可能性はあるが、でも、

アメブロにも書けないようなやつだからな。これ。

その可能性は低いだろう。

「だからさ」
だから何か。

梟。

梟で何か?

何か無いの私!

無駄に感情ポイントを使っただけになっちゃうよこのままじゃ。

一生誰にも言えない。言う必要もないレベルの体験をしただけになっちゃうよ。

「つくろう、みんなで、安心なまちをふくろう、みんなで、安心なまちに見間違えました」
飲み会でもしゃべれないこんなの。だって面白くないもん。

だから何か、

何か展開をくっつけて、これにもう少しばかり人造的なものをくっつけてお話にならないか。

なんとか昇華したい!

お話になんとか。

「あ、」
家に帰りつき、玄関のカギを開けて荷物を玄関の所にどんって置いた時、ふと、

「そういえば、昨日公園の短編集の中に」
朱川湊人さんっていう作家の都市伝説セピアっていう作品集の中に、フクロウ男っていうのがあったなあ。

それを思い出した。

そら当然私なんて凡庸で、平凡なやつだから、あれを買った当時ボロ泣きしたのは、昨日公園。これはなんか世にもでも人気があるらしい。残念ながら未だ見る機会を得てないけども。

で、現在も昨日公園以外は何も覚えていない。ただフクロウ男っていう話はあったような。

パソコンをつけてネットで調べた。

あった。確かにあった。

都市伝説セピア。昨日公園の次がフクロウ男になってる。

全然覚えていない。でも、ウィキとかで見るとそのフクロウ男でオール讀物推理小説新人賞をとったらしい。へー。そんなに面白かっただろうか?それとも当時はまだ子供だったから、精神面が子供の領域を出てなかったから、だから何も思わなかっただけだろうか?

せっかくだし、もう一回読んでみようかな。

昨日公園もまた読みたいしな。

それから買ってきたものを玄関におきっぱにした状態で、そのまま本の山から都市伝説セピアを探し出した。
「ない」
無かった。

「いやおかしいよ」
たまに昨日公園だけ読み返している記憶がある。

だからあるはずだ。

絶対にあるはずだ。

あるはずなんだけど。

ない。

無え。

無かった。千葉のお宝鑑定団で買ったハードカバーの都市伝説セピア。

「無い」
何処にもない。

なんで?

そのまま、なんでだ?って失意の状態で買ってきたものを冷蔵庫に入れて夜を迎えた。

失意が消えなかった。

昨日公園を失ったのは痛いぞ。私。

もう一回買うか?

色々と考えた。

「ピンポーン」
チャイムがなった。

出てみると、知らない人だった。

フードを被っており、目が梟のように金色に光っていた。

ほーほーほー。

フクロウ男だろうか?

その手には都市伝説セピアを持っていた。

「ああ」

この時になって少し記憶がよみがえった。フクロウ男の記憶。

確かどっちかを言うんだよ。

その、

ほーほーほーに対して。

ほーほーほーで返すか、ちゅーちゅーちゅーで返すか。

どっちかだったんだよ。

どっちだったかなあ。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-25

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