冬のショコラ

 都会には、さまざまな感情が、ぬりかためられていて、アスファルトみたいに。ぼくは、でも、ホットケーキのふかふかさを、恋しく思うので、夜の、とくに終電がまもなくという頃の、よなかにむかってゆく感じが、なんだか、こわかった。ラジオから流れてくる、しらない国のうたが、ときどき、泣けるくらいに、やさしい。
 ファミリーレストランのあかりしかみえない。
 いつのまにか、ほかの天体は、ぼくらのみえないところに消えてしまった、と思っていたら、どうやら、ぼくらが、かれらのみえないところに移動してしまったらしい。宇宙漂流。変わらず存在していた、インターネットという空間で、いくつもの愛をみた。恋も。死も。生も。何百光年はなれたとしても、愛と、恋と、死と、生は、きっと、えいえんにつきまとうものとして、そこにある。
 冬季限定、ということばに、浮かれて。

冬のショコラ

冬のショコラ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-17

CC BY-NC-ND
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