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死と優しさは隣り合わせだ

いつだってそうだったんだ

僕が思うほど、きみは強くはなかった

きみが思うほど、きみは強くはなかった

心のどこかで燻っているもの

それが一体何なのか

僕は突き止めようともせずに

ただ漫然と 時が経つのを待っていた

そのあいだにもきみが

刻々と死に近づいていることなんて知らずに

肝心なところで僕は 足が竦んでしまう

届くように声が出せない

こうして立ち尽くしているあいだにも

月は翳っていく

闇に呑まれていく

大切なものを 容赦なく奪っていく

そしてもう二度と、戻ってくることはない

もういいんだ

もう、優しくしないでくれ

強がらないでくれ

ひとりで哀しまないでくれ

僕が思うほど、僕は強くはなかった

きみが思うほど、僕は強くはないんだ

僕は紛れもなく優しさに生かされてきた

きみの優しさに生かされてきた

けれど、きみにとってはそうではなかった

きみにとって優しさは命懸けのものだった

それに気づくのに、僕はこんなに時間がかかってしまった

こんなにきみを待たせてしまった

心のどこかで燻っているもの

その正体がいま、ようやくわかったよ

きみを失いたくないという、ただそれだけの想いだ

伝えたいことは、生きているうちに伝えなければいけない

ひとりでいかないでくれ、黙っていかないでくれ

次は届くように叫ぶ

いなくならないでくれ、と。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-11-08

Copyrighted
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