丸い月の夜に
いつものように、わらって、ないて、おこって、息をしている。
あのこたち、ふつうにやさしいのよって、となりのお姉さんは微笑み、イヤリングが揺れる。だれもいないと思っていたのに、真夜中の公園には、おおかみたちがいて、でも、おおかみたちはどことなく、おおかみっぽくなくて、そうだ、なんだか、にんげんみたいなのだと、ぼくは思いながら、コンビニで買ったピザまんをたべている。ハンカガイ、と呼ばれる一画では、さいきん、異種交流が盛んで、世の中、異種婚が流行っているそうなので、そういわれると、にんげんにもみえるおおかみたちが、こうやって公園に集っているのも納得の気がする。ブランコをこいで、ジャングルジムにのぼり、芝生に寝転がり、ベンチでお茶をのんでいる。となりのお姉さんは、スマートフォンの青白い光に照らされて、ときどき、歌を口遊む。公園の池には、わにがいる、といううわさをきいたことがあるけれど、まだ逢ったことはない。逢ってみたいなと思うし、こわいなとも思う。ピザまんのチーズが冷めて、ちょっとかたまったようになっているのは、きらいではない。
ぼくのあしもとで、野良猫が眠っている。
おおかみと恋愛、という可能性を想像してみて、ぼくのなかで、なきにしもあらず、という結論に達する。
となりのお姉さんは、微妙に音痴だった。
丸い月の夜に