ひとりぼっちごっこ

 むなしい、と思った瞬間の、夜の、どこにも行けない感じ、電車も、バスも、おわってしまって、車もなくて、歩いても、歩いても、あてもないのだから、歩いても、どこにもたどりつけないで、途方に暮れている、あいだに、街は、ゆるやかに、夢のなかへと、かたむいてゆく。
 いつも、にせものの孤独に、さいなまれている。
 ほんものの孤独、というものを、わたしは知らないで、孤独ぶっているので、ときどき、そんな自分が、ばかみたいって思うし、かわいそうとも思う。となりの家の、サンドイッチをつくるお店をやっているしろくまが、そんなわたしに、十七才らしい悩みですねと言って、フルーツサンドを食べさせてくれるのだけれど、それって、なんか、ばかにしてない?と、はじめはいまいましげに、でも、フルーツサンドに罪はないから、むしゃむしゃ食べてやって、それからは、わたしが見たところのしろくまの性格的に、十七才らしい悩みですね、は、しろくまの、極素直な感想であり、ばかにしてるわけでも、いやみをのべているわけでもないことに、気がついて、そして、変わらずいただく、しろくまのフルーツサンドは、それはもう、とてつもなくうまいのだった。スマートフォンが鳴らない夜は、世界が、わたしを、つまはじきにしていて、誰もいない、タイムラインに、とつとつとつぶやいては、なかったことにする瞬間の、消去、を、躊躇なく、流れ作業のようにタップする、あの時間の、どうしようもない、空虚。
 立ちすくむ、スクランブル交差点の、まんなかで。
 頂点には、青白い月。

ひとりぼっちごっこ

ひとりぼっちごっこ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-19

CC BY-NC-ND
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