否定された私たち

 偏愛主義の君が荒廃の街に墓を立てる花輪の飾りと共に。たとえば三十七階建て高層ビルの墓。常に流行の最先端にあった商業施設の墓。かたや街が発展する前から存在し親しまれた寫眞屋さんの色褪せたプラスチック看板の墓。憩いを求めて作られた人工公園の墓など。
 私の心臓を君は少しずつ掠め取ってゆく。傍らから。
 あらゆる雑事がなくなり清められたという空気を透かして見上げる星空の美しさに息をのんでいるあいだに侵食されて。緩やかに変色してゆく身体は君が触れたところから化学反応を起こしてスパークする。ひしゃげる。
 君と泳ぐシーツは永久的に純白。
 ひび割れたアスファルトの隙間から覗く新緑。
 祈りだけが朽ち果てる。現実。

否定された私たち

否定された私たち

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-17

CC BY-NC-ND
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