右手と左手

傷を縫っては温める

君の涙が傷口に沁みる

そこだけが僕達の真実になる

ここにいることの証明になる

不意に絡まってしまっても

そのままでいよう

夜が明ける前に

逃げよう

どこか遠くへ、遠いところへ。

行き先なんてどうでもいい

宛のない旅をしよう

何処に行くかじゃなく、誰と行くかだから

何を見るかじゃなく、誰と見るかだから

どう生きるかじゃなく、誰と生きるかだから

だから、ずっと手を繋いでいよう

君と同じ時間を生きていることを感じながら

君が隣にいることを感じながら

ずっと手を繋いでいよう

脚が動かくなって、喉が潰れて声が嗄れて、

目が見えなくなって、自分のことさえ忘れてしまっても

呼吸が止まるその日まで

ずっと手を繋いでいよう

夢の中でも、記憶の中でも

ずっと手を繋いでいよう

君の温度を、僕だけは忘れないように

忘れないように、

ずっと手を繋いでいよう。

右手と左手

右手と左手

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-15

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