走るワラベ

章子

ワラベが走っていた
草を一本 手にして
走っていた

あの草は
猫じゃらしかしら

童ワラベわらべ
一人走っている

ほろほろと崩れる
煮魚の身のように
今、が崩れてゆく

ねえおぼえている?
悲しいね
どうして時間は
一方にしか流れないのだろう

一度味わった時は
どうして
戻らないのだろう

巻き戻しのきかない時から
必死に逃げるように

今この時が
崩れて過去に変質する事から
必死にまぬがれるように

ワラベは
走っていた

猫じゃらしを揺らしながら
抵抗するように

その姿に
精いっぱいの声援を我は送る

溜まった時達に
戸惑いつつ 我は 送る

走るワラベ

走るワラベ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
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