わたしたちの国

ふたりは結託していた

それはふたりの世界では最も美しい結託だった

演じていることを忘れてしまうと

演じているうちにそれは現実に

そして真実になる

ふたりは時につまらない諍いをし

つまらないことでいつまでも笑い合い

つまらないことでいつまでも泣き合い

身を寄せ合い 固く手を握り

誓いの黙祷をし 力いっぱい抱きしめ合った

互いの体温をよすがに眠っていた

自分の体温さえ分からなくなるほどに

そこは聖域だった

誰にも穢されるべきでない聖域だった

人知れず ふたりだけの世界を築いていた

その世界の外の人間には風景の一部に過ぎない物も

ふたりにとってはかけがえのない出来事として

いつまでも輝きつづけていた

わたしたちの国

わたしたちの国

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-10-04

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