「せかいせいふくだめでした。」

 将来の夢が「せかいせいふく」だったアホが借金取りに追われて死んだので
 その遺灰を適当に掻き集めて海やら川やらに流しました
 そのうちそれは天に昇って、しょぼい小雨になるでしょう
 誰の目にも留まらず、ひび割れたアスファルトを濡らして消えるでしょう

 あのアホの湿った布団の下に一通の遺書 しわくちゃの広告の裏
 「せかいせいふくだめでした。」って書き出し
 竜巻の中で書いたみたいな文字 紙の端に飛び散ったインクの跡

 あのアホのことは思い出せません、その価値もないただのアホでした
 いつも自分が悪党だと思っているアホでした、嫌われ者を演じるアホでした
 他人を蔑ろにしているふりをするアホでした、自分本位のふりをするアホでした
 エロゲをやり過ぎたアホでした、ラノベを読み過ぎたアホでした
 知らんうちにくたばっちまったアホでした

 そのうちあれは天に昇って、しょぼい小雨になるでしょう
 誰の目にも留まらず、ひび割れたアスファルトを濡らして消えるでしょう

 僕だってやりたかったんだ、「せかいせいふく」
 僕だってアホになりたかったんだ、「せかいせいふく」

 でもさ、もう終電が来ちゃうから、この新聞も読み終わっちゃったから

 そうです、いつだって我々は、
 「せかいせいふくだめでした。」

 そうです、いつだって我々は、
 「せかいせいふくだめでした。」

「せかいせいふくだめでした。」

「せかいせいふくだめでした。」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-27

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