学校を休んだ日

 平日の、ひるまに、やすんでいるときの、平和的な感じは、すこしだけ、こわい。こわいくらい、おだやかで、静かだ。家のなかの物音、生活をしている音、というのが、しないので。蛇口から、水が、じゃあじゃあ流れる音。コンロに火をつけるときの、かちかちという音。テレビの音。いすをひく音。ドアをあける音に、しめる音。それから、ふしぎと、窓の外の音も、きにならないくらいで、たとえば、車の走る音。犬の鳴き声。だれかの話し声。
 本をめくる、指が、なんだか、かさかさしている。
 熱っぽく、からだぜんたいが、じょじょに、ベッドに、しずんでゆくような、それは、やわらかな土のうえに、なげだされ、そのまま、星に、とりこまれてゆくみたいな感覚に、にている。
 いま、このとき、この部屋だけ、せかいから、切り離されているのかもしれない、と思いながら、目をつむる。
 さびしい。
 けれど、なぜだか、心地よかった。

学校を休んだ日

学校を休んだ日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-19

CC BY-NC-ND
原著作者の表示・非営利・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-NC-ND