草矢の儚4️⃣

草矢の儚 4️⃣


 一九七五年の盛夏。
 二六歳の草矢は福島の民間中小産別(中小労働組合県支部)の専従組織部長だ。東北地域協議会の役員も兼務していた。
 この時、草矢は『異人の儚』にも登場した花巻のあの女性社長の工場の争議を指導していた。そこの労働組合が草矢の産別に加盟していて甚だ難しい争議だったから、「争議屋」の二つ名を持つ草矢が派遣されたのだった。
 争議の支援要請を兼ねてある会議に出席するために、その組合の役員の二七歳の女、艾ヨモギを連れて秋田山中の某温泉に行った。

 深夜に草矢が大浴場に行くと、脱衣場に二つのかごが並んで男物と女物の浴衣が脱ぎ捨てられていた。混浴だったと改めて思った。
 濃密に立ち込める硫黄の湯気の中を密かに奥に進んでいくと、嬌声が聞こえた。さらに進んで目が馴れると、最も奥の板張りの洗い場に肉の塊が現れた。艾と岩手の書記長の男が性交していたのだ。
 女が男に股がっている。淫奔に揺れるはち切れるばかりの乳房が焼き付いた。

 翌日の夕刻。豪雨警報が出ていたが、明日の日程があったから、雨の中を草矢と艾は花巻に向けて帰途についた。暫く走ると雨足がさらに激しくなる。やがて、雷鳴が轟き始めた。稲妻が走る。
 山脈の深奥の険しい峠に差し掛かると、豪雨の最中に大型トラックが停車して道を塞いでいた。草矢が降りてドアを叩くと、「崖崩れだ。道が塞がってる。救助が来るそうだ。待つしかない」と、叫んだ。前にも数台の車両がいる。
 二人は車に閉じ込められた。ウィスキーが積んであったから二人で飲み、やがて眠りに落ちた。
 夜半の一時。雨はやんでいた。眠りから覚めた女が外に出て戻ると、「暑いわ。狂ったみたいに蒸すんだもの」と、草矢の覚醒を促す。

 いきなり、「昨夜、見てたでしょ?」と、艾が言う。「何を?」「大浴場よ真夜中に?」「気付いていたのか?」
 淫靡な艾の手が草矢の股間に延びてきた。「これ?立てて?弄ってたでしょ?」「今夜は私がやってやる?」「組合員とはしない主義だ」「どうして?」「仲間だからだ」「会社は敵だから?社長とはやってもいいの?」「見てたのよ?」「先日の団交の後に忘れ物をして会議室に戻ったら。あなたと社長が抱き合っていたわ。慌てて戸を閉めたの。気付かなかったでしょ?誰にも言わないわ。私だって見られたんだもの」
 草矢は観念した。女が男根を撫で始めた。

 艾には自営業の恋人がいた。争議が解決すると暫くして退社して結婚した。時を経ずに出産した。子種は誰なのか。その夫なのか。岩手の役員なのか。草矢の可能性もあるのだ。或いはその他の男かも知れない。命名は艾がした。草和クサオと名付けたのだ。
 女は二年後に離婚した。女の度重なる姦淫が原因だった。岩手の書記長との関係は続いていた。自分の子ではないと疑った夫は親権を放棄した。
 水商売で働きながら散々に淫蕩を重ねた女は、六年後に三五歳で、八歳の草和を連れて再婚した。相手は遠縁の農家の男で三七歳。原発でも働いている。不倫した妻が二年前に男と出奔して、一年前に離婚が成立していた。一〇歳の一人娘を抱えて孤軍奮闘、奮迅する男を見かねて親戚が進めた縁談だった。

 その年の夏休みのある猛暑の日だった。草和の昆虫採集を義姉の桜子が手伝って、二人で里山に入っていた。
 偶然に通りかかった神社で、畑に出ている筈の両親が交接しているのを目撃した。
 炎天下の昼下がりであった。神社の縁に座った父がウィスキーを飲んでいた。少し離れた小さな落ち水で母が半裸で汗を流している。
 幼い二人は杉の大木に隠れて、息を殺して覗き続ける。
 水浴を終えた母が半裸のままで縁に座りウィスキーを飲み始めた。入れ替わって落ち水に行き、水浴びを終えた父が母を呼んだ。乳房を揺らして歩み寄った母が膝まずいて口淫を始めた。
 縁に戻ると、母が父に股がり口を吸った。崩れた淫らな尻が割れて、子供達の眼前に大きく開かれた。
 少女は幾度か母の交接を盗み見ていたがこれ程露なのは初めてだ。座り込んで股間に手を入れ、膨れ始めた乳房を揉んだ。義弟の股間を探ると隆起しているのだった。

 少女が義弟の手を引いて隠れ家の洞窟に入った。「あの人達と同じことをしたい?」義弟が頷いた。少年を脱がせると無毛だ。少女が幼い股間をくわえて義母を真似てしゃぶると勃起した。
 少女が仰臥して裸の股を開いた。やはり無毛だ。義母を真似て膣を探ると濡れている。義父を真似た少年が挿入した。「気持ちいい?」「いい」「誰にも言っちゃ駄目よ?」「言わない」「これやるの。好き?」「好き」「やりたくなったら言うのよ。してあげるから」少年が頷く。「誰ともしちゃ駄目よ」頷く。「したら、これをちょんぎっちゃうよ」少年が射精した。

 二人は二〇半ばで結婚した。草和は農業をしながら原発の下請け会社で働いている。趣味の写真は玄人はだしだ。桜子は豊満で健丈な女に成熟していて農作業を苦にしない。二児の子育ても余念がない。
 二人は性交の写真やビデオを撮るのが好きで猥褻な映画も見る。


(続く)

草矢の儚4️⃣

草矢の儚4️⃣

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-09-02

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