ダンスホール・ハイウェイ
かろやかな、ステップ。あざやかな、まよなかの、高速道路の、街灯。オレンジ。
むかし、おきわすれてきたものを、ときどき、思い出しては、指折りかぞえる。両手で事足りるほどだけれど、きまぐれに思い出すくらいには、愛着があったもの、後悔も、ノスタルジアと呼べば、響きはいいけれど、でも、そういうのとはすこしだけ、ちがうもの。離した手の、あの冷たさは、いまでも、夢にみるよ。冬の海に、突き落としたような気分は、たぶん、一生、わすれないのだろうし、きっと、わすれないのが、つぐないなのだと思う。ぼくのなかの、きみへ。
セーラー服の少女が、踊ってる。
二十五時。
高速道路は、無法地帯で、パンダのディスコダンスに、おとこのこたちの花売り。月下香。おばあちゃんが弾くエレキギター、おじいちゃんが吹き鳴らすトランペット、合奏。宴、あるいは儀式、もしくは、もっと、仄暗いもの。
やさしい絵描きが、ぼくのとなりで歌う。明日になったら笑えているよ。絵描きの、おだやかな歌声が、ぼくのからだを、甘く、容赦なく、打ち抜いてゆく。明日、という言葉の、途方もなさ。
ダンスホール・ハイウェイ